2020/04/13 22:18


1.はじまりのこと

それは、一軒のお花屋さんのチャレンジから始まりました。

滋賀県大津市にお店を構える「Flower produce ichica」(代表:岩上智佳子さん)は、「滋賀らしいお花屋さんをつくりたい」との思いから、2016年より滋賀県産の花や素材を使ったフラワーギフトなどを販売する「Biwako Sweet Project」をスタート。琵琶湖のヨシなどを使った母の日ギフトなどを制作され、その収益の一部を「マザーレイクフォーラム運営委員会」にご寄附くださったことから、筆者(佐藤:マザーレイクフォーラム運営委員会幹事委員)もご縁を持つことができました。

私は琵琶湖の研究を生業とする者ですが、仕事を通じてお花屋さんと知り合うのは初めて。琵琶湖で水草が大量繁茂して困っていること、それを行政が刈取り、堆肥化して配布しているが利用者が少ないことなどの話をしたら、なんと岩上さんは「ぜひ使ってみたい!」とおっしゃったのです。私の中で水草とお花屋さんはつながっていなかったのですが、よく考えたら堆肥と花屋は直結しますよね。それならばということで、マザーレイクフォーラムが培ってきたネットワークや知見なども活かし、「母の日」や「父の日」、「びわ湖の日(7月1日)」にあわせて琵琶湖の様々な「恵み」を使った商品を企画、制作していこう!その過程で様々な事業者や市民、行政らのつながりを作れるし、誰もが買い物を通じて琵琶湖にいいことができるようになる!と始まったのが、「マザーレイクにありがとう実行委員会」です。

実行委員会には、岩上さんとマザーレイクフォーラムをつないでくれた「ミスターびわ湖」こと川本勇さん、同じくマザーレイクフォーラム運営委員会幹事委員である藤田知丈(実行委員会代表)、他にもデザイナーの方、過去に商品企画を担当されていた方、琵琶湖真珠を使ったアクセサリーを制作販売されている事業者の方などが関わってくれることになりました。
(写真:滋賀県提供)

2.「マザーレイクにありがとう実行委員会」で目指したこと

琵琶湖や滋賀県の環境によいものを広めていこうという取り組みは、滋賀県では以前からなされています。一番有名なのが「石けん運動」です。1977年に琵琶湖で赤潮が大量発生したことを契機にして、「琵琶湖の環境に影響のある、リンを含む合成洗剤をやめて石けんを使おう!」と市民らが立ち上がり、その後条例の制定にまで結びつきました。そして条例施行の翌年から、7月1日を「びわ湖の日」とすることになりました。他にも滋賀県庁が全国に先駆けて環境に優しい物品の使用を進める「グリーン購入」の取り組みを始めましたし、農薬や化学肥料を半減した「環境こだわり農産物」が広がって県内では一つのブランドになっています。

(写真:滋賀県提供)

一方で、「環境にいいから購入しよう」という取り組みには限界も感じていました。多くの人たちは、環境にいいから物を買うのではなく、安いから、便利だからといった理由で選ぶからです。琵琶湖によいものを広めるためには、全く別のアプローチが必要なんじゃないか。そう考えていた時に思い出したのが、「滋賀県民はみな琵琶湖が好き」ということ。好きならばきっと、「ありがとう」の気持ちを伝えることも素直にできる気がします。そんな想いから、「マザーレイクにありがとう実行委員会」を立ち上げることにしたのです。

(佐藤祐一)