2020/06/10 21:29


母の日・父の日・びわ湖の日プロジェクト、始動から3年目。今年の父の日は、中川木工芸×-CONNECT-のコラボが実現しました。

セレクトショップの店主で目利きの -CONNECT- 西村さんが父の日にコラボをお願いしたのは、中川木工芸 中川周士さん。中川さんは、伝統的な木工芸の製作技術を受け継ぎ、世界をフィールドに活躍をされている職人さんです。

”ファザーフォレストにありがとう” というテーマの父の日ギフト。水源の森が生み出す恵みを、どんな商品に仕上げてくださるのか、その製作現場をお見せいただくこととなり、中川木工芸の比良工房にお伺いしました。期待に胸を膨らませながら、工房へ。



JR蓬莱駅から徒歩8分程度。

山々と琵琶湖に囲まれ、水田に空が映る美しい風景のなかにおしゃれな工房がありました。



工房に入るとまず目に飛び込んできたのが、シャンパンクーラー。
中川さんは世界的にその作品が評価されていらっしゃいますが、中川さんを一気に有名にした作品がこちらです。
これは、シャンパンで有名なドン・ペリエヨンが公認のシャンパンクーラーとして採用された、中川さんの代表作。
シンプルなのに、美しさを感じる器です。



さて、そんな中川さんに今回お願いした父の日ギフト。

「母の日のマザーレイクギフトに続き、父の日には水源の森を感じられるような商品を作れないか」さらに、「自然のままを表現するようなものが作れないか」と西村さんからのリクエスト。

今回中川さんが仕上げてくださった商品がこちら。



「中川木工芸 × -CONNECT-『依り代〜森の中で神宿る器〜』」
自然の木目や樹形を生かした造形。木の生命力を感じられる作品です。

今回の器、作り方に工夫があるとのこと。
製作現場を見学しながら、その製作方法を教えていただきます。 

まず、今回の器は、ちょっと作り方が変わっているとのこと。 通常、桶に使う木には木の繊維が真っ直ぐなところを使います。あのシャンパンクーラーも元は真っ直ぐな木材が使われています。しかし、今回は逆に、曲がっているところをあえて生かして作り上げられているとのこと。

「たとえば、このような木です」と中川さん。
写真のように、木に枝が生えている部分は、枝の生えている周りの木目が曲がって伸びています。


では、この曲線を生かして、どんな風に器が作られているのか、実演いただきました。

まず、丸太からハンマーを使い、木を割っていきます。木目に合わて刃を入れるとスッと割ることができます。




コップサイズの大きさになったら、そこからさらに内部をくりぬいていきます。(下の写真)


そして中身をくり抜いた木の外側を合わせていくと、もともとつながっていたもの同士ですので、ピタッと木目が合います。(上の写真)

「普通は、別々の木を削って、組み合わせます。でも、今回は一つの木材からコップを作りあげる手法をとっています」と中川さん。

中川さんはカンナを使い、”削る”という技術が非常に高く、先ほどのシャンパンクーラーのようにこれまでの作品では、美しく表面を削ることで作品の価値を高めていらっしゃいました。しかし、今回のコップは、通常であれば、燃やしてしまっていたような木材を使い、できる限り削らず、磨かずに作り上げるため、発生するクズも減らされています。

また、その結果、より自然の持つ自然観が表現された器ができあがります。このコップは、中川さんの新たな挑戦でもあるとのことでした。


最後に、上質なニッケルシルバーの箍(タガ)で、結んで作り上げられます。

「お父さんっぽい器をぜひ探してみてほしい」と中川さん。一つ一つ違う形。二つとして同じものがない。そんな商品です。

こうして作られた器ですが、実は今回使う木材にも、こだわりがあるとのこと。

「今回、比叡山に生える神聖な木を使わさせていただいております。特別な木だったので、残しておいたのですが、水源の森の恵みを生かした父の日ギフトという今回の企画にぴったりだと思ったので、使うことにしました。」

比叡山延暦寺 根本中堂の改修に伴う足場工事でやむを得ず伐採した木を中川さんが譲り受けたといいます。その木を今回の商品のために使ってくださいました。

さて。中川さんは最近、製作現場を積極的に動画や写真を通じて発信されています。(中川さんInstagram)

「コロナ後の世界、今よりも工芸品の価値が見直されるのではないかと思うんです」と中川さん。
「便利なもの、効率的なものを求めるだけだと、100円ショップのコップで良いはずです。手入れも楽です。でも、精神面や環境面、そういう価値がより重要になっていくと思います。」


最後に、中川さんの工房におじゃまさせていただいた中で、一番印象に残っている言葉について。

    『削ったり、削らなかったり、一見両極端な仕事に見えるけれども、自分の仕事の目標は木の魅力を最大限に活かすことで、その木に1番向いている仕事をすること。だからまっすぐな木は削って磨いてそのまっすぐな木が一番活きる仕事を、曲がった木はできる限り削らず磨かずその曲がった木が一番活きる仕事を探す。自分がこうしたいと思って作るのではなくて、お医者さんがその人その人に合った処方箋を出すように、私も木ごとに合った仕事をすることをいつも考えています。』

今回の「中川木工芸 × -CONNECT-『依り代〜森の中で神宿る器〜』」は、中川さんが一つ一つ、それぞれの木が持つ魅力を最大限に引き出して作ってくださった器で、2つとして同じものはありません。

ぜひ、この器を手に取っていただいて、水源の森「ファザーフォレスト」を感じ「ありがとう。」を伝えていただけたらと思います。